HPトップページにもどる 読書感想文トップページにもどる ※ここの感想は全てネタバレになっています ======================= 2025年9月6日(土) 夜また夜の深い夜 桐野夏生 面白かった。子供が誰かに手紙を出しているお話。 異国で日本人の子供が学校に通わせてもらえず、ある日 漫画喫茶で漫画の世界を通して日本が素敵な国だと思い、 いつか日本に行きたいと思ったり、今の暮らしに我慢できず 家出し、偶然出会った日本人のホテルに匿われるが 目についたスマホやノートPCがどうしても欲しくなり 盗み、逃げる。 我はこのあたりで主人公マイコの子供さが不快になった。 まあ子供だし、同じ年代だったら我も同じ事をしただろう。 後でそう思い直し、なんだか知らないうちに「正しい選択が できない子供」への嫌悪感みたいのあるな〜。と、自分を 嫌悪した。今現在の大人の中年の我だって、毎日何か 間違えてるし、作り話の中の正しくない事にハラハラじゃなく イラッとくるの、なんなんだろう。まー心が狭いんだろう。 話を本の感想に戻す。その後2人の移民少女に出会い 共に盗みやいわゆる悪い事をして必死に生きる。 この、誰も頼れない、頼る親族もない、だから生きる為に 盗みを働く事は賛成。という言い方もおかしいか。 しかしギャングから盗みをするのはハラハラしたし、 この少女らが無惨な事になるのでは、それも読者を 一喜一憂させる為の舞台装置的に登場するかとヒヤヒヤも した。結局、漫画喫茶の男がマイコの母親について 誤った情報を流し、あやうくマイコはこの男の嘘に 流されるがまま焦がれた日本に帰国─── とはならなかった。よっしゃい。 カンが働かない我だが、この満喫男の言う事には 嘘くせえなと訝ってたら案の定。 マイコは仲良しの1人をむごたらしい死別で失い、 残った1人もこの街は辛すぎると船で別れる事に。 ちゃんと見送りに来たマイコ。ここが分岐点だった。 我は、この後、漫喫男に騙されて日本に連れて行かれ、 実際と違う事実に社会で晒されるバッドエンドかと思った。 が、そこでマイコの実母が後ろから現れ、船の旅券を渡し 満喫男のデタラメを明かし、マイコの出生も聞かされた ものとは全く違うと知らされる。やっぱな。あいつは なんか怪しかった!どやあ。 そして漫喫男たちから逃げ延び、数年後、名前も顔も変え、 母と外国で暮らすマイコ。ここでおしまい。 日本には一生帰らなかった。ああそうなんだ。 途中、日本でこんなにひどい目にあった人たちがいると 聞かされ、実母がその加害者である事に傷つき、せめて 母が管理している多額の金を被害者に返すべきと思う マイコ。我もそう思った。 しかし日本に行けばマイコは宗教団体の金を持ち逃げした 悪人の愛人の娘として、日本でバッシングを受ける。何故 されなければいけないのか、マイコは何で?と思った。 そのシーンでオウム真理教の事を思い出した。 被害者たちのガス抜きやサンドバッグ、社会の話の ネタになるべきとも言える事を提案する漫喫男。 それを拒否するマイコ。 我ならそれが自分の罪とかドラマチックに選択してたな。 なんかマイコ、すげーじゃん。 頼る身内も親族も金も家も無い時にこの選択はできんよ。 流されず幸せを得たマイコで話は終わる。 桐野夏生作品のグッドエンド系でした。 この、日本はここより良いよ〜!って始まって きっと主人公マイコは日本に行くんだ。って思わせて、 いや日本はくそです。行くわけねえだろ。 って終わるの、好き。東京島思い出す。 登場人物はほとんど女でシスターフッドで この作品も好きだなあ。不幸って自分のと比べて あーすべきこーすべきって話じゃない。 あと最後に波止場で母が明かした真実、これも やっぱ嘘だったりするのかもしれない。 本当にマイコは極悪人の娘かもしれない。 しかしいいじゃん。マイコは前より幸せになった。 少なくとも日本に行ってたら酷い目にあってたし、 一生苦しむ事になった。 読書中、我は何故主人公マイコが日本に帰る話と 思ってたのか。そこは我が島国根性こじらせた くそ日本人だからだと思う。視野が狭い‥。 おわり ======================= 読書感想文トップページにもどる HPトップページにもどる